Brocade SilkWorm Multiprotocol Router を使ってみよう
初級編
Multiprotocol Router とはなんじゃろう
SilkWorm FC Switch/Director との違いは
なぜ Multiprotocol Router が必要なのか
どんなときに使えるか
中級編
FCR の言葉
FCR の概念
Multiprotocol Router 特有なコマンド群
FC Router の設定してみよう
デバイスはどのように見えるのか
上級編
FCIP の設定をしてみよう
iSCSI の設定をしてみよう
各種ステータスを見てみよう
portLogDump を見てみよう
初級編
Multiprotocol Router とはなんじゃろう
Multiprotocol Router(通称 MPR)の解説は以下のURLを参照のこと。
http://www.brocadejapan.com/products/mpr/index.html
上記いわく、FC-FC ルーティング、FC-IP ゲートウェイ, iSCSI-FC ゲートウェイを実現
するものである。FC-IP, iSCSI-FC はよくわかるが、FC-FC ルーティングとはなんぞや
という質問をよく受ける。詳細は「なぜ Multiprotocol Router が必要なのか」で。
SilkWorm FC Switch/Director との違いは
上記のとおり、通常の FC スイッチだけではなく、IP のハンドリングもできる。つまり
Ethernet(1Gbps Ethernet, まだ 2Gbps Ethernet じゃないよ)のスイッチでもある。設
定だけで FC/Ethernet の切り替えができるので、全ポート(16ポート)を Ethernet の設
定にすれば、高価な Layer-2 Ethernet スイッチの完成。
ちなみにこの製品、ストレージ仮想化機能を実現するためのスイッチであったりする。
これを書いている時点ではまだアプリケーションはないけど。ストレージ仮想化だけじゃ
話は面白くないけど、今後は Brocade の Intelligent Fabric に期待。ストレージの仮
想化だけじゃなく、サーバプロビジョニングまで行えれば SAN の必要性は 100% だから
ね。
なぜ Multiprotocol Router が必要なのか
そもそもなんで MPR (特に FC-FC ルーティング)が必要なのだろうか。FC-IP, iSCSI を
使いたいときは自明なので特に語らなくていいだろう。
FC-FC ルーティングは、ファブリックをまたがった仮想 SAN を構築するものである。つ
まり、複数のファブリックに存在するデバイスを仮想的な SAN にマッピングするための
機能である。この機能から直感的にイメージするのは Cisco の VSAN だが、VSAN は大き
なファブリックを分割するものであるのに対し、FC-FC ルーティングの提供するのは複数
のファブリックの結合である。これが LSAN (Logical Private SAN) である。
なぜ、複数のファブリックにあるデバイスをスイッチをカスケードすることで利用できな
いのかというと、ファブリックの結合には以下のような制限があるからである。
・ファブリック間で一致させなければならないパラメータ
ファブリックパラメータ(各種 TOV など)
・ファブリック間でユニークでなければならないパラメータ
ドメインナンバ
・ファブリック間で一貫性がなければならないパラメータ
ゾーニング
LAN スイッチでも VLAN などを切っていれば似たような制限はいくらでもあるのだが、
SAN が難しいといわれている要因のひとつが上記である。
LAN との比喩で書くと、10.xx.yy.zz のサブネットと192.168.aa.bb のサブネットを L2
スイッチのカスケードで接続してもお互いのサーバ間では通信できないのと同じである。
LAN の場合、ルータを使ってサブネットを結合し、ルーティング情報を設定すれば、サブ
ネット間で通信が可能になる。このとき、各サブネット内がさらに細かいVLANにわかれて
いたとしても、互いのサブネット同士は気にしない。FC-FC ルーティングはまさにファイ
バチャネルでこれを行うためのものだ。
ということで、FC-FC ルーティングにより各ファブリックの細かな設定を気にせずにファ
ブリック結合が可能になるということである。
どんなときに使えるか
FCIP, iSCSI はやはり自明なので、FC-FC ルーティングについて書くと、ファブリックを
結合するようなときに使えるはずだ。例をあげると以下のものがある(勝手に夢想してい
るものもあるので注意)。
・いわゆる Information Lifecycle Management (もしくは DLM)
データをメタデータにより管理し、コスト最適な(もしくは何かが最適になるような)
ストレージに格納する。
あっちの部署の空いた XServe RAID に SANRISE のデータのうち、1年以上アクセス
していないものをいれちゃえ!って感じ。ま、HSM 的発想ですな。
・バックアップ統合じゃ
バックアップ統合なんて昔から LAN でやっていたという貴兄にお勧め。LAN-free
バックアップを使って統合使用もんなら、バックアップライセンスだけでもすごい
金額です。そもそも統合するメリットは、テープライブラリ TCO の削減であったり
バックアップ(つまりデータ管理ポリシ)の一元化であるはず。であれば、MPR でファ
ブリックを結合し、テープライブラリ統合を行ったり、ディスクバックアップ環境
への統合なんてグーですな。
・移行じゃ
システム移行で旧システムと新システムのつなぎに使うのなどいかがでしょ。ま、
バックアップと同じイメージです。
・テスト環境
移行と同じ意味合いです。ただし、ブレードサーバや VMware などの論理パーティ
ションを使う場合は以下のものもありかも。
・サーバ統合
ストレージとファブリックはそのままでサーバを統合するケース。ブートディスク
なんかも SAN に置くことで、サーバの置き換えが容易になります。ちなみに、OS
のパッチ配布なんかも LAN 経由で行うのでなく、SAN ベースになっちゃうかも
(*そんなに夢想でもないかも)
・インテリジェントファブリックサービスの実装
Wide-Area {File Service,Block Migration} Service を実装。当然、アクセス
は FC/IP など種々のものがあり、データ管理形態もファイル、ブロックといろいろ
あるので、ルータでまず結合じゃ。